我が子がサッカーに打ち込む姿を見るのは、親として何事にも代えがたい喜びですよね。その熱い想いから、つい「もっと上手くなってほしい」「試合で活躍してほしい」と、サポートに力が入ってしまう。その気持ち、痛いほどよく分かります。
しかし、その愛情あふれるサポートが、時として、知らず知らずのうちに我が子の成長を邪魔してしまっているとしたら…?
こんにちは!元高校サッカー部キャプテンで、多くの選手、そしてその保護者の皆さんと接してきた、30代の週末プレーヤーSです。
この記事では、僕がキャプテンとして、そして一人のサッカー選手として見てきた数々の経験から、お子さんのサッカー人生を最高のものにするために、保護者の皆さんに「これだけは絶対にやってはいけない」と心から願う、3つの行動について、具体的な理由と改善策を交えながら徹底解説します。
なぜ「親の関わり方」が、選手の成長にこれほどまでに影響するのか?
具体的なNG行動の話に入る前に、まず、なぜ「親の関わり方」が選手の成長にこれほどまでに大きな影響を与えるのか、その本質についてお話しさせてください。
サッカーは「楽しむ心」が全ての原動力
サッカーが上手くなるために最も必要なものは、技術やフィジカル以上に、まず「サッカーが大好きだ!」という純粋な気持ちです。この「楽しむ心」こそが、辛い練習を乗り越え、困難な壁に立ち向かうための、全ての原動力となります。しかし、親からの過度なプレッシャーや期待は、この最も大切な原動力を、いとも簡単に奪い去ってしまうことがあるのです。
僕がキャプテン時代に見た、サッカーを楽しめなくなった「天才」の話
僕が高校時代、チームに一人、ずば抜けた才能を持つ後輩がいました。誰もが彼の将来を期待していました。しかし、彼の父親は非常に教育熱心な方で、毎回の練習や試合に顔を出し、プレーの一つ一つに厳しいダメ出しをしていました。最初は父親の期待に応えようと頑張っていた彼も、徐々に笑顔を失い、プレーは萎縮し、いつしか「サッカーが怖い」と口にするように。そして、あれだけの才能がありながら、彼は高校を卒業すると同時に、サッカーから完全に離れてしまいました。
僕はキャプテンとして、彼に何もしてあげられなかった。あの時の無力感と後悔は、今でも僕の胸に突き刺さっています。あんなにサッカーが好きだった彼の心を壊してしまったのは、紛れもなく、愛情という名の「過度な期待」だったのです。この記事は、あの時の僕の後悔から生まれています。
【元キャプテンが提言】我が子の成長を止める、親が絶対にやってはいけない3つの行動
お待たせしました。ここからは、僕が数多くの選手と保護者を見てきた経験から導き出した、お子さんの成長を邪魔してしまう可能性のある、具体的なNG行動を3つ、ご紹介します。もし、ご自身に少しでも当てはまる点があれば、今日から少しだけ、関わり方を変えてみませんか?
NG行動1:試合中の「コーチング」~ピッチの監督は、君じゃない~
試合中、我が子のプレーに熱が入り、観客席から「もっと走れ!」「シュートを打て!」「そこはパスだろ!」といった具体的な指示、いわゆる「コーチング」をしていませんか?その声援、お子さんにはどう届いているでしょうか。
なぜ観客席からの指示が、選手の判断力を奪うのか?
サッカーは、刻一刻と状況が変化するピッチの上で、選手自身が状況を判断し、プレーを選択していくスポーツです。その最も重要な「判断力」を養うべき試合の場で、親が外から答えを叫んでしまっては、子供は自分で考えることをやめてしまいます。「親の言う通りに動けばいいや」と、指示待ちの選手になってしまうのです。これでは、本当に必要な自主性や判断力は、いつまで経っても育ちません。
元キャプテンの視点:ベンチの監督と、スタンドの親。二人の監督は必要ない
ピッチ上の監督は、チームの戦術を熟知し、全体のバランスを見て指示を出す、ただ一人であるべきです。そこに、スタンドから全く別の指示が飛んでくれば、選手は何を信じていいか分からず、混乱してしまいます。僕がキャプテンだった頃も、こうした保護者の声に惑わされ、プレーが中途半端になってしまう選手を何人も見てきました。チームの和を乱し、監督との信頼関係を損なう原因にもなりかねません。
では、どう応援すればいい?最高のサポーターになるための「声かけ」
では、親は黙って見ているしかないのでしょうか?いいえ、そんなことはありません。最高のサポーターとして、選手の力になる「声かけ」があります。
- ポジティブな応援:「ナイスプレー!」「いいぞ、走ってる!」「頑張れ!」といった、選手を勇気づけるポジティブな声援。
- チーム全体への応援:我が子だけでなく、チームメイトの良いプレーにも拍手を送り、チーム全体を応援する姿勢。
- 結果ではなく、プロセスを称える:ゴールを決めた時だけでなく、必死にボールを追いかけた時、勇気を持ってチャレンジした時、そのプロセスをこそ、褒めてあげてください。
実体験:僕の両親は、僕のプレーに一度も口出ししなかった
僕自身の話をすると、僕の両親は、僕がサッカーを始めてから引退するまで、一度も僕のプレーに対して「ああしろ、こうしろ」と言ったことはありませんでした。ただ、毎回の試合を黙って見に来てくれ、試合が終わると、勝っても負けても「今日もお疲れ様。よく頑張ったね」とだけ言ってくれました。その変わらないサポートが、僕にどれだけの安心感と、サッカーに打ち込む自由を与えてくれたか分かりません。今、僕がサッカーを心から愛し続けていられるのは、間違いなく両親のおかげだと感謝しています。
NG行動2:試合後の「反省会」~車の中は、聖域であれ~
試合が終わり、家へ帰る車の中。今日のプレーについて、親子で熱く語り合う。一見、素晴らしい光景に見えます。しかし、その内容が一方的な「ダメ出し」や「反省会」になってしまってはいませんか?
なぜ試合直後のダメ出しが、子供の自己肯定感を下げるのか?
試合を終えた直後の選手は、肉体的にも精神的にも、非常に疲れています。そして、自分のプレーがどうだったか、上手くいかなかった点はどこか、そんなことは親に言われなくても、本人が一番よく分かっています。そんな心身ともにデリケートな状態で、最も信頼する親からプレーのダメ出しをされれば、子供の自己肯定感は深く傷つき、「自分はダメな選手なんだ」と思い込んでしまう危険性があるのです。
元キャプテンの視点:選手が本当に求めているのは「共感」と「承認」
試合後の選手が、親に求めているのは、的確なアドバイスではありません。まずは、「今日の試合、悔しかったな」「あのシュート、惜しかったな」といった、自分の気持ちに寄り添ってくれる「共感」。そして、「最後までよく走ったな」「あのディフェンスは素晴らしかったぞ」といった、頑張りを認めてくれる「承認」です。僕もキャプテンとして、負けた試合の後ほど、選手一人ひとりの良かったプレーを見つけ、具体的に伝えるようにしていました。まずは心を満たしてあげることが、次へのエネルギーに繋がるのです。
では、どう関わればいい?子供の成長を促す「魔法の質問」
もし、どうしても試合について話したいのであれば、「反省会」ではなく、「振り返り」の時間にしましょう。その主役は、親ではなく、子供自身です。
- 「今日の試合、どうだった?」: まずは、子供自身の言葉で試合を語らせてあげましょう。
- 「一番楽しかったプレーは?」: ポジティブな側面から話を引き出します。
- 「もし、次にもう一回同じ場面があったら、どうする?」: 失敗を責めるのではなく、未来に向けた改善策を、子供自身に考えさせる「魔法の質問」です。
こうした関わり方は、子供の自主的な振り返りの習慣を育む上で、非常に効果的です。
実体験:父との「反省会」が嫌で、サッカーから逃げ出したくなった日
僕のチームメイトに、父親がサッカー経験者で、非常に熱心な家庭の子がいました。彼は試合後、いつも父親と車の中で長い「反省会」をしているのが、僕たちの間でも有名でした。ある日、彼が僕に「もうサッカーが嫌いだ。家に帰りたくない」と涙ながらに打ち明けてくれたことがあります。サッカーが好きで、父親の期待に応えたい。でも、ダメ出しされ続けるのが辛い。その葛藤に、彼は押しつぶされそうになっていたのです。愛情が、時に子供を追い詰める凶器にもなるのだと、僕はその時、痛感しました。
NG行動3:コーチへの「過度な介入」~信頼関係の破壊者~
我が子を思うあまり、チームの指導方針や、コーチの選手起用に対して、口を出してしまっていませんか?その行動は、チーム全体の信頼関係を根底から揺るがしかねない、非常に危険な行為です。
なぜ親の介入が、子供の立場を悪くするのか?
親がコーチに意見すればするほど、一番辛い立場に置かれるのは、他ならぬ子供自身です。「あいつの親は、うるさいからな…」。そう思われてしまえば、コーチも他の選手も、その子に対して自然に接することが難しくなります。また、子供自身も「自分のせいで、親とコーチが揉めている」と感じ、チームの中に居場所がなくなってしまうかもしれません。子供の成長を願う行動が、結果的に子供からサッカーを楽しむ環境を奪ってしまうのです。
元キャプテンの視点:チームの和を乱す「モンスターペアレント」の存在
僕がキャプテンだった頃も、残念ながら、自分の子供のことしか考えず、チームの方針に過度に口を出してくる保護者の方はいました。そうした方の存在は、チームの和を著しく乱します。選手間に不公平感を生み、コーチの指導意欲を削ぎ、チーム全体の士気を下げてしまう。キャプテンとして、そうした外部からの不協和音を調整するのは、本当に骨の折れる仕事でした。チームを信じ、指導者を信じ、任せる。それも、親の重要な役割の一つです。
信頼関係を築くための、コーチとの「正しいコミュニケーション」
もちろん、コーチと全くコミュニケーションを取るな、というわけではありません。大切なのは、その「目的」と「態度」です。
- 目的: 我が子の起用を訴えるためではなく、チームをサポートするために何ができるかを相談する。
- 態度: コーチへのリスペクトを忘れず、感謝の気持ちを伝える。
例えば、「いつも子供たちのために、ありがとうございます。何かチームでお手伝いできることはありませんか?」といった姿勢で接すれば、コーチも心を開き、良好な信頼関係を築くことができるはずです。こうしたコミュニケーションについては、JFA(日本サッカー協会)もリスペクト・ガイドラインでその重要性を説いています。
実体験:ある母親の「一言」が、チームの雰囲気を最高にした話
僕たちのチームに、いつも練習や試合の準備を率先して手伝ってくださる、ある選手のお母さんがいました。彼女は、我が子のプレーには一切口出ししませんでしたが、試合に負けた日、コーチが落ち込んでいると、「監督、いつもありがとうございます。今日の試合、みんな最後まで諦めずに走っていて、見ていて感動しました」と、そっと声をかけたそうです。その一言に、コーチはどれだけ救われたことか。後日、その話を伝え聞いた僕たち選手も、そんな素晴らしい保護者の皆さんのためにも頑張ろうと、チームの一体感が一層高まったのを覚えています。
まとめ – あなたは、子供にとって「最高のサポーター」であれ
ここまで、サッカー少年の親が絶対にやってはいけない3つの行動について、僕なりの考えをお話ししてきました。
おさらい:我が子の成長を邪魔しないための「3つの約束」
最後に、今日お伝えした3つのNG行動を、「3つの約束」として、もう一度おさらいしましょう。
- 試合中の「コーチング」はやめる: ピッチの監督は一人だけ。あなたは最高のサポーターに徹しよう。
- 試合後の「反省会」はやめる: 車の中は聖域。ダメ出しではなく、共感と承認の言葉を。
- コーチへの「過度な介入」はやめる: チームを信じ、任せることも親の重要な役割。
元キャプテンから、全てのサッカー少年の保護者の皆様へ
子供がサッカーに打ち込める時間は、永遠ではありません。その限られた、かけがえのない時間を、最高の思い出にしてあげられるかどうか。その鍵の半分は、間違いなく、親であるあなたの関わり方が握っています。
技術的な指導は、僕のような経験者や、コーチに任せてください。あなたにしかできない、最高の役割があります。それは、どんな時も子供の一番の理解者であり、一番のファンであり、そして、サッカーという素晴らしいスポーツを楽しむ「仲間」でいてあげること。
この記事が、あなたと、あなたの愛するお子さんのサッカーライフを、より輝かせるための一助となることを、心から願っています。